2025/05/15 15:19
テッラドンナ (Terradonna) / イタリア トスカーナ地方

Terradonnà(テッラドンナ)は、ワインが「家族の団らん」の象徴であり、
経済的価値よりも精神的な意味合いが強かった1950年代に、近隣のカサラッピからやってきたロッシ家の物語です。
そのロッシ家の「物質的かつ精神的な後継者」が3 代目のアンナ・リーザです。アンナ・リーザは、母から畑を継承しました。畑から醸造に至るまでの全ての作業は母親から学び、その中で一番感謝すべき教えは、毎年違う自然条件に向き合うための忍耐と粘り強さを持つことだいいます。継承後、この土地に伝わる農業文化や最新の農業・醸造技術を独自に勉強する努力家な当主です。ワイナリーが位置するスヴェレートは、DOC Val di Cornia の伝統的な生産地域。丘々に囲まれ、海からたった10キロほどの場所にあります。土壌はミネラル豊富な粘土質、泥質、砂質、石灰質の混じる複雑な構成をしています。有機肥料を使用し、濾過機を使わずに自然な状態で清澄します。葡萄自身の力を信じ、極力手を加えないように、 自然に任せた醸造を行います。
率直で情熱的なアンナ・リーザは、夫のマウロ、息子のミケーレとともにこのワイナリーを運営しています。1950年代以降、世界も農業も大きく変化しましたが、TerradonnàのDNAには、変化に対応しながらも、人間らしさを大切にする精神がしっかりと刻まれています。それは「家族」や「もてなし」といった価値観であり、今も変わらぬ指針です。
アンナ・リーザはこう語ります――
「私たちのワイナリーを訪れる人は、みんな家族の一員です」
「Terradonnàは、ワインが“もてなし”や“分かち合い”の象徴となる場所。家庭的な空気が流れ、本物の“トスカーナの家族”の姿に出会える場所です」
ここではワインが、土地と人とをつなぐ存在です。しぐさや言葉、まなざし、感情とともに、スヴェレートの人々の温かさや人間味を映し出してくれます。
「畑を耕し、ブドウを育て、良いワインを味わう――。そのひとつひとつの瞬間には、苦労と喜びが交互に訪れ、それを共に分かち合うことで、より深い意味を持つのです」
マウロ、ミケーレ、アンナ・リーザの語る言葉は、自然体で飾らず、シンプルで明快。それは、私たちのワインの“本物らしさ”が、伝統のルーツに根ざしながらも、テクノロジーを生かした現代的なビジョンによって育まれていることを物語っています。
ミケーレはこう強調します――
「うちのワインが評価されるのは、私たち自身の生き方と結びついているからなんです」
家族経営という規模感、年間25,000本という適切な生産量が、私たちの個性を支えています。
また、ワイナリー内では、祖父ロムアルドの情熱から生まれた鉱物コレクションも見学いただけます。特に酸化鉄をはじめとする鉱物は、スヴェレートの土地の個性を象徴しています。この地は、金属を多く含む丘陵地帯とエルバ島に挟まれ、古代エトルリア文明の歴史においても重要な拠点でした。
この地域のテロワールと、地中海性の風通しの良い気候は、高品質なブドウの栽培に理想的であり、Terradonnàでは、それを国際品種と土着品種の両方で表現しています。
私たちのワインラベルは、アートや美意識を感じさせる抽象的なデザインで、土地とワインにまつわる風景や感覚を描いています。たとえば、収穫後のブドウ畑が見せる移ろう色合いや、醸造・収穫の一瞬に込められた情熱――そうした一コマをラベルに込めているのです。
では、スヴェレートとはどんな場所か?
「トスカーナの本質を感じさせる小さな村。それでいて、好奇心と開かれた心で未来へ向かう、ダイナミックで活気ある場所です」
ブドウ畑を散歩し、ワイナリーでテイスティングを楽しむ――
それは、この地域のあたたかく心地よい精神に触れる、小さな旅なのです。
