2026/01/20 19:09
フィンカ・マス・ペルデュ(Finca Mas Perdut)/ スペイン ペネデス地方

— ペネデスの大地と共に生きる、5世代続く再生型ワイナリー
スペイン・カタルーニャ州、バルセロナの南西に広がるPenedès(ペネデス)。
この地は、スパークリングワイン「カバ」の名産地として世界的に知られる一方、近年ではナチュラルワインや再生型農業の先進地域としても注目を集めています。そのペネデスの中でも、より穏やかで農業的な表情を残すバイス・ペネデス(Baix Penedès)の町、サンタ・オリバに拠点を構える家族経営ワイナリーが、Finca Mas Perdutです。
フィンカ・マス・ペルデュは、5世代にわたってワイン造りを続けてきた農家一族によるプロジェクトです。彼らにとってワイン造りとは、単なる生産活動ではなく、「人生を愛し、土地と家族の記憶を未来へ受け渡すための営み」。この思想こそが、彼らのワインやオリーブオイルの根底に流れています。
彼らの畑でまず目を引くのは、ブドウ畑の中に点在する樹齢100年を超えるオリーブの木の存在です。これらのオリーブは景観的な要素ではなく、畑の生態系を支える重要な一部。深く根を張った古木は土壌を安定させ、微生物や昆虫、小動物の棲み処となり、結果としてブドウ畑全体の健全性を高めています。Finca Mas Perdutでは、このオリーブからもエクストラバージン・オリーブオイルを生産しており、ワインと同様に最小限の介入で仕上げられています。
栽培において彼らが実践しているのは、有機栽培と再生型ブドウ栽培(レジェネラティブ・ヴィティカルチャー)。化学肥料や除草剤は使用せず、土壌を「消費する対象」ではなく「再生させる存在」として捉えています。被覆植物を活かし、耕起を最小限に抑え、土中の微生物や有機物循環を尊重することで、畑そのものが年々力を取り戻していく――それが彼らの目指す農業の姿です。
こうしたアプローチは短期的な収量や効率を優先するものではありません。むしろ、時間をかけて土地を健全な状態へ導き、次の世代が同じ畑で農業を続けられることを最優先に考えています。5世代続く家族だからこそ、「今だけ良ければいい」という選択肢は存在しないのです。
醸造においても、その姿勢は一貫しています。ブドウはすべて手摘みで収穫され、セラーでは自然酵母のみで発酵。清澄や過度な濾過は行わず、SO₂の使用も極力控えられています。技術でワインを“作り込む”のではなく、畑で育ったブドウの性格をそのままワインに映すことが目的です。そのため、ワインには年ごとの気候や区画の違いが素直に表れ、どれもが唯一無二の表情を持っています。
Finca Mas Perdutのワインは、ペネデスらしい明るい果実味と地中海性の温暖さを感じさせながらも、重さに偏らず、ナチュラルで伸びやかな酸が全体を引き締めています。飲み心地は軽やかで、日常の食卓に自然と寄り添うスタイル。それでいて、土地の奥行きや農業的な背景が静かに伝わってくる、誠実な味わいです。
また、彼らのエクストラバージン・オリーブオイルも、ワインと同じ哲学のもとで造られています。樹齢100年のオリーブから搾られるオイルは、フレッシュで透明感があり、苦味や辛味が過度に主張することなく、料理の素材を引き立てます。ワインとオイルを並べることで、Finca Mas Perdutがいかに「土地全体」を一つの生命体として捉えているかがよく分かります。
Finca Mas Perdutは、派手な評価やマーケティングを前面に押し出す生産者ではありません。しかし、彼らのワインやオイルに触れると、環境を尊重し、働く土地と誠実に向き合う姿勢が、味わいとして確かに感じ取れます。それはテクニックではなく、世代を超えて培われた価値観の結晶です。
人生を愛し、伝統を未来へつなぐ。
Finca Mas Perdutは、ペネデスという土地に根を張りながら、再生型農業という現代的な視点で「これからの農業とワイン造りの在り方」を静かに示してくれる存在です。自然派ワインに興味がある方はもちろん、本当にサステナブルな生産とは何かを味わいながら考えたい人にこそ、手に取ってほしいワイナリーです。

当店取り扱いワイン